SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の取り組みとは?自治体や企業事例から学ぶ

「海の豊かさを守ろう」と聞くと「何から始めればいいの?」と感じる人も多いのではないでしょうか。プラスチックごみや生活排水など、海の問題は身近な暮らしと深くつながっています。
本記事では、SDGs目標14の意味と課題、世界や日本の取り組み、家庭でできる実践方法をわかりやすくまとめました。
読むことで、今日から「自分にできる海を守る行動」が見つかり、美しい海を未来へつなぐ一歩を踏み出せます。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、地球上の海洋資源を保護し、持続的に利用していくことを目的とした国際的な目標です。
この目標は、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に含まれる17の目標の一つで、2030年の達成を目指しています。
目標14のターゲットには、海洋汚染の防止、海洋資源の持続可能な利用、海洋環境問題への対処などが取り組むべき課題であることが明記されています。
関連記事:SDGs目標14 海の豊かさを守ろう|海洋汚染の現状に目を向けよう!
参考:外務省|我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ
なぜ今「海の豊かさを守る」ことが重要なのか

目標14が必要な理由は、地球規模で進む環境悪化が、海洋生態系や水産資源の減少を通じて、経済・食料・安全保障といった生活基盤に深刻な影響を及ぼしているためです。
海は地球の表面の約7割を占め、人類の食料や医薬品、気候変動の緩和など、私たちの暮らしに欠かせない役割を果たしています。しかし、近年は海洋ごみや乱獲、気候変動などで、海の生態系が急速に悪化しています。
生物学的に持続可能な世界の海産魚資源の割合は、1974年の90%でした。しかし、2013年には69%へ減少しています。
安定した暮らしを守るためにも、国や企業、個人が海の資源を守り、大切に使うことが重要です。
参考:JAMSTEС|海のはたらき
参考:国連広報センター|海の豊かさを守ろう
参考:国連広報センター|海の豊かさを守ることはなぜ大切か
世界が抱える具体的な課題

ここでは、海の豊かさを守るために、世界全体で解決すべき課題を解説します。
海洋プラスチックごみとマイクロプラスチック
海洋プラスチックごみの汚染は、深刻な地球環境問題の一つです。現在、世界の海には年間約800万トンのプラスチックごみが海へ流れ込んでいるといわれています。
魚やウミガメなどの生き物がプラスチックごみを誤食したり、絡まって死に至ったりする被害が深刻です。海洋汚染に関する報告書によると、海洋プラスチックは、ウミガメの86%、海鳥の44%、海洋哺乳類の43%の種を含む少なくとも267種に影響を与えていると指摘されています。
特にマイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されています。
マイクロプラスチックとは、一般に5mm以下の微細なプラスチック類のことです。プラスチックごみの細分化だけでなく、洗顔料や歯磨き粉などに含まれるプラスチック粒子の流出、合成繊維の衣料の洗濯などによっても発生します。
プラスチックは自然に分解されにくく、長い年月をかけて海の中に残り続けるため、早急な対策が求められています。
関連記事:
海洋プラスチック問題とは|原因や対策・とるべき解決方法や事例紹介
プラスチック問題とは?現状・原因・私たちにできる対策まで、わかりやすく解説
参考:環境省|第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失
参考:環境省|海洋プラスチックごみ問題について
水産資源の減少と乱獲
世界では、ずさんな海洋管理や乱獲により、水産資源の減少が進んでいます。
1974年から2015年にかけて、過剰に漁獲されている資源の割合は、10%から33%まで増加しました。
関連記事:サステナブルな未来へ|ネイチャーポジティブで生物多様性を守ろう
持続可能な漁業を実現するには「必要な分だけ獲る」「小さい魚や産卵時期の魚は獲らない」といった漁獲規制や資源管理が必要です。
参考:農林水産省|17の目標と食品産業とのつながり:目標14に対する取組
参考:農林水産省|日本の水産業と、魚たちを守る取組を調べてみよう!
藻場の減少
海洋の健全性を守るためには、藻場の保全が必要です。
「海の森」と呼ばれる藻場は魚や貝のすみかで、二酸化炭素を吸収して地球温暖化を抑える働きもあります。しかし、埋め立てや水質の悪化、化学物質の粒子や海水温の上昇によって、世界中で急速に減少しているのが現状です。
海の生き物の成長や繁殖を守るために、早急な対策が欠かせません。
関連記事はこちら:ブルーエコノミー|豊かな海を守るために、今、私たちにできること
参考:水産庁|藻場の働きと現状
参考:水産庁|(5)漁場環境をめぐる動き
参考:ecojin|ワカメやコンブがCO2を減らす?
国内外の「海の豊かさを守ろう」取り組み

続いては、海の豊かさを守ることに貢献する、国や自治体、団体の取り組みを解説します。
カナダ「Plastic Bank」
カナダ発の「Plastic Bank(プラスチックバンク)」は、海洋プラスチックごみ問題に対処しつつ、貧困に苦しむ人々を支援する独自のシステムを構築している団体です。
発展途上国の人々が海岸や街中でプラスチックごみを集めると、通貨として交換できる仕組みが構築されています。
集められたプラスチックは再生素材として企業に販売され、再生プラスチック製品として再び市場に戻ります。ごみが資源として循環し、環境と経済の両方に良い影響を与えているのです。
海洋プラスチックの削減と地域の雇用創出を同時に進める新しいモデルとして注目されています。
参考:plasticbank
大阪ブルー・オーシャン・ビジョン
日本政府が中心となって進めている「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」は、2050年までに新たな海洋プラスチックごみをゼロにすることを目指す国際的な目標です。2019年のG20大阪サミットで日本が提案し、世界80カ国以上が賛同しました。
実行計画は、以下の5つの柱に基づいて施策を展開します。
- プラスチック製品の使用抑制と環境への流出の削減
- プラスチックの資源循環に向けた地域活性化のシステム推進
- 海洋プラスチックごみ発生抑制のための国際協力
- 良好な水環境の創造
- あらゆるステークホルダーとの連携
例えば、大阪市では「みんなでつなげるペットボトル循環プロジェクト」が実験的に開始されました。これは、家庭から排出されるペットボトルを、地域コミュニティと事業者が売買契約して回収する、リサイクルシステムです。売却益を地域に還元することで、効率的なリサイクルと地域の活性化が期待できます。
参考:環境省|大阪ブルー・オーシャン・ビジョン
参考:環境省|第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失
参考:大阪市|「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」実行計画」
参考:大阪府|大阪発「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」推進プロジェクト
静岡市の環境教育
静岡市では、地場産業のプラモデルを題材にした環境教育活動を市内の小学校で実施しています。海洋プラスチックごみを生み出さない意識づけを図るとともに、海岸清掃などの実践行動を促すことが目的です。
子どもたちが河川や海岸の清掃活動を行ったり、地元の海岸に漂着したペットボトルをリサイクルしたプラスチックを混合したプラモデルを組み立てたりします。
今後は、全国で展開できるようにパッケージ化を検討しており、日本各地への海洋プラごみ削減の取り組み拡大に貢献することが期待されています。
参考:plasticssmart|地場産業のプラモデルを活用した海洋プラごみ削減の取組
四日市市の清掃活動
三重県四日市市では、吉崎海岸で毎月第1日曜日に開催している早朝清掃が、2025年8月3日で200回目を達成しました。2009年に開始し、今年で16年目を迎えます。
2021年からは「よっかいち海ごみゼロ大作戦」という吉崎海岸の清掃活動を開催し、清掃後は大学教授による勉強会やごみ収集車体験もあります。2022年は370人が参加し、約2トンのごみやペットボトル、流木などを回収しました。
市民、企業、学生、自治体が一体となって海の豊かさを守っている事例といえます。
参考:YOUよっかいち|早朝清掃200回達成、四日市の吉崎海岸、記念の物語を紙芝居で発表
参考:四日市|よっかいち海ごみゼロ大作戦について
参考:plasticssmart|よっかいち海ごみゼロ大作戦!! 2022
企業の先進事例

ここでは、海の豊かさを守る企業の取り組みを紹介します。
大王製紙「エリプラシリーズ」
「エリプラシリーズ」は、大王製紙による脱プラスチック・減プラスチックを目指した紙製品のブランドです。従来のプラスチック製のハンガーやカトラリー、包装材などを紙で代替するために開発されました。
ドトールコーヒーが展開するコーヒーショップとカフェでは、紙製マドラー「エリプラマドラー」を使用したことで、2020年は年間5.7トンのプラスチック削減に成功したそうです。
参考:plasticssmart|環境にやさしい『紙』エリプラシリーズ
参考:大王製紙株式会社|環境対応製品(脱プラスチック等)の販売
参考:大王製紙株式会社|01_エリプラ_リーフレット_20230630
テクノラボ「buoy(ブイ)」
テクノラボの「buoy(ブイ)」は、海洋プラスチックごみをアップサイクルした製品ブランドです。単にリサイクルするのではなく、長く大切に使ってもらえるように唯⼀の⾊や模様をもった製品を生み出しています。
製品の原料は海洋プラスチックごみが100%で、ごみの回収場所がシールまたは刻印で明記されています。2024年までに、年間2トンの海洋プラスチックごみが材料として活用されました。
企業の生産技術を生かして、海洋プラスチックごみを循環させる仕組みを生み出した先進事例といえます。
参考:plasticssmart|捨てられている海洋プラスチックを二度と捨てられない美しい工芸品に「buøy」
参考:buøy
参考:buøy|about-buoy
フラットアワー
フラットアワーは、直販や沿岸漁業、研究コーディネート、ブルーツーリズムなど、長崎県対馬を拠点に持続可能な水産業を実践しています。
これまで生臭さが理由に海へ捨てられていた未利用魚を、血抜きによって商品化することにも成功しました。水産研究フィールドとして適する対馬で、研究者のデータ把握・管理のサポートもしています。
SNSで漁村での生活の情報を発信したり、漁業体験を提供したりして、地域と住民との交流を深める場作りを実施し、地域の活性化にも貢献しています。
関連記事:未利用魚とは?SDGsとの関係やおすすめ通販を紹介
参考:合同会社フラットアワー|No.11 合同会社フラットアワー
参考:環境省
「海の豊かさを守ろう」に貢献する個人の取り組み

ここでは、個人でもできる、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献する取り組みを解説します。
海を守る商品を購入する
海の資源を守るためには、持続可能な漁業を支える買い物が大切です。代表的な目印は、「MSC認証」と「ASC認証」です。これらのラベルがある場合は、水産資源と海洋環境に配慮した持続可能な漁業や養殖業で生産された水産物であることを証明しています。
MSC認証は「海のエコラベル」と呼ばれ、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物である証です。
ASC認証は、持続可能な養殖業を証明する認証制度です。ASC認証の水産物にラベルをつけることで、責任ある養殖の推進を消費者も支援できるようになりました。
パッケージに青いMSCラベルや緑のASCラベルがあるものを選ぶだけで、海を守る取り組みに参加できます。
参考:Marine Stewardship Council|持続可能な漁業とは?
参考:Marine Stewardship Council|MSC「海のエコラベル」とは
参考: ASC Japan|About ASC
マイボトル・エコバッグ・詰め替え商品の利用
使い捨てのプラスチック製品を減らすことは、海のごみを減らす最も身近な方法の一つです。
ペットボトルやレジ袋などのプラスチックは、風や雨で流されて最終的に海へたどり着くことが多く、海洋汚染の大きな原因になっています。マイボトルやエコバッグを使ったり、シャンプーや洗剤などを詰め替えタイプへ変えたりするだけで、プラスチックごみの削減につながります。
関連記事:
マイボトルはSDGsの目標何番?企業事例やエコ割もご紹介
【SDGs】ゴミ問題の現状は?解決に向けて実践したい6つのこと
参考:政府広報オンライン|海洋プラスチック問題の解決策。マイボトルやマイバッグから始めるプラスチックとの賢い付き合い方!
排水の見直し
何気なく排水している台所や洗濯で使う洗剤、ソースや油などが、川や海の環境に影響を与えています。例えば、マヨネーズ大さじ1杯を流した場合、魚が住める水質にするためには、約3,900Lの水が必要です。
お皿を洗う前に汚れを拭き取ったり、植物由来の洗剤を使ったりするなど、できる行動から始めてみましょう。
参考:環境省|生活排水読本
ビーチクリーンやごみの持ち帰り
海辺を訪れたときにできる一番シンプルな行動が、ごみを持ち帰ることです。小さなごみでも、そのまま放置されると風や波で流され、海洋ごみの一部になってしまいます。
全国では、自治体や地域のボランティア団体などによる「ビーチクリーン活動」も盛んに行われています。週末に家族で海岸を歩きながらごみを拾うだけでも、海を守る立派な社会貢献です。
関連記事:SDGs14「海の豊かさを守ろう」|企業や個人の海を守るための取り組み
海の豊かさを守るためにできることから取り組もう

海洋プラスチックごみ、乱獲、海洋酸性化などの問題は地球全体の課題です。自治体や企業、個人の取り組みが求められています。
最後に、重要ポイントを振り返りましょう。
- 海洋汚染の防止は日常の選択から始まる。
- マイボトル・詰め替え商品・ごみの分別など、消費行動の見直しが汚染を減らす第一歩である。
- MSC・ASC認証のシーフードを選ぶことで、資源を守る漁業を応援できる。
- スマート・プラスチックや地域活動に参加し、社会全体でごみゼロを目指すことが重要である。
- 認証ラベルの選択、排水の見直しなど、誰でもできる習慣が海の回復を後押しする。
未来の海を守るために、私たちにできることは多くあります。今日からできる小さな取り組みを、ぜひ実践してみましょう。
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