ESG

【動物実験廃止を目指して】化粧品会社のSDGsへの取り組みとは

【動物実験廃止を目指して】化粧品会社のSDGsへの取り組みとは

動物実験」というと医療現場だけのことだと思っている方も多いのではないでしょうか。

実は私たちが身近に使用する化粧品にも多くの動物実験が行われています。

動物愛護やSDGsへの意識が高まる中、動物実験への反対とともにSDGsへの取り組みを行う化粧品メーカーが増えています。

動物実験について、反対か賛成かは簡単に決められることではないかもしれません。

しかし人間の過剰な欲求のために犠牲になる動物を減らすことは間違いなく必要です。

この記事では動物実験について解説し、動物実験を廃止した海外と国内の化粧品メーカーの取り組みをご紹介します。

動物実験について知ろう!

動物実験といってもピンとこない方は多いのではないでしょうか。

まずは動物実験はなぜ必要なのか。

どのようなことが行われているかを知ることからはじめましょう。

動物実験はなぜ必要なのか

医学の分野では動物実験は非常に重要な存在でした。

医薬品や化学薬品を新たに開発する場合は、それが人の体に副反応などの影響がでないか確認しなくてはいけません。

そのため人間の代わりに動物たち、主にウサギやモルモット、ネズミなどを使って反応を調べるのです。

化粧品は医薬品ではありませんが、人間の体に使用するものです。

アレルギーや皮膚への反応がどのようなものかを調べるため動物実験が行われています。

これらの動物実験で命が失われている動物たちの数は、年間50万頭ともいわれています。

動物実験って何をするの?

医薬品や化粧品の人体への影響をテストするためには、侵略的措置(外部からの刺激を与える)を動物に対して行います。

開発した薬品や化粧品を実験動物の皮膚に塗布したり、体を拘束して目を閉じさせず薬品を投与し続けたりします。

他にも直接注射をしたり、薬品そのものを食べさせたりする実験が行われており、動物たちの苦痛は計り知れません。

多くの実験動物たちは身体に後遺症が残り、ひどい場合はそのまま死に至ることもあります。

化粧品メーカーにおける動物実験

化粧品メーカーでは上記で述べたような動物実験を長く行ってきました。

化粧品というデリケートな分野は使用する人の肌にダイレクトに関るので、安心安全な商品を謳うために動物実験を繰り返してきたのです。

しかしそもそも種の違う動物での実験が本当に有用なのか、決して安全性の保証にならないのではないかといった意見も多く出ており、動物実験そのものに疑問が持たれています。

動物実験の賛成反対は簡単に決められない

このように動物愛護や倫理観の問題から、動物実験に対しては多くの反対の声が上がっています。

しかし動物実験により医療や化学が大きく発達したことも事実です。

今後も動物実験でしか成り立たない研究や、技術の開発はあり得るでしょう。

動物実験に対して賛成か反対かを簡単に結論づけることができないのが現状です。

関連記事:化粧品業界が取り組むSDGs|解決すべき問題や取組事例を紹介

SDGsの目標で動物たちに関わるものはなに?

SDGsの目標で動物たちに関わるものはなに?

持続可能な開発目標「SDGs」には、人間以外の生物に関して掲げた目標が存在します。

ここでは関連するそれらの目標をご紹介します。

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」では、ターゲットの8において「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」というテーマが掲げられています。

SDGsが掲げる持続可能な社会とは、人間だけが存在する社会ではありません。

すべての自然や生命が共生する社会を目指しています。

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とSDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では「海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避」することが掲げられています。

また、SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」では、「生態系と生物多様性の価値」を守ることが掲げられています。

実験動物に限らずあらゆる生命を守っていくことが、人間も安心して暮らすことのできるサステナブルな社会と言えるでしょう。

実験動物に関する愛護の考え方と基準理念

動物実験を行う研究者たちは、実験動物に対してできる限り人道的な配慮を行っています。

ここでは動物実験の基準理念「3Rの原則」「クルエルティーフリー」について解説しましょう。

動物実験の基準理念「3Rの原則」とは

イギリスの研究者Russell氏とBurch氏が1959年に提唱した動物実験に対する大切な福祉の基準理念になり、以下の3つが提唱されています。

    • Refinement(動物の苦痛軽減)
    • Reduction(使用数の減少)
    • Replacement(代替法の活用)

引用:実験動物の適正な飼養保管等を推進するために(環境省パンフレット)

日本の動物愛護管理法とは

日本では実験動物の適正な飼養保管などを「動物愛護管理法」に基づいて推進しています。

動物実験の適正化においては、動物実験に関する各省庁が各種法令に基づき実施しており、さらには「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」も日本学術会議によって制定されました。

引用:実験動物の適正な飼養保管等を推進するために(環境省パンフレット)

化粧品メーカーにおける「クルエルティーフリー」意識の高まり

クルエルティーフリーとは英語で「cruelt free」で、意味は「残虐性がない」ということです。

製品開発において一度も動物実験がされていないもののことを指し、ヴィーガンアパレルなどを中心に広がっています。

化粧品メーカーでもクルエルティフリーのブランドを開発するところが増えており、業界全体の意識の変革が進んできています。

動物実験をしていない化粧品メーカー紹介

動物実験をしていない化粧品メーカー紹介

ここからは動物実験を行っていない化粧品メーカーを紹介します。

自分が使用している化粧品メーカーも動物実験を行っていないか確認してみてくださいね。

海外メーカー

エスティ・ローダー・カンパニーズ

エスティ・ローダー・カンパニーズはアメリカに拠点を置くスキンケアやヘアケアを扱う化粧品メーカーです。

動物実験を30年以上前に取りやめている先駆的な企業でもあり、革新的な検査方法を駆使して動物実験を行うことなく、化粧品の安全性を証明しています。

参照:エスティ・ローダー・カンパニーズ公式サイト

イソップ

オーストラリアのメルボルンを拠点に構えた世界的化粧品メーカーのイソップは、世界に先駆けて断固としていかなる動物実験にも反対してきました。

イソップの全製品に動物由来のものはひとつもなく、一切の動物実験も行っていません。

参照:イソップ公式サイト

日本メーカー

精進コスメ 株式会社レイスコスメティックス

精進料理をコンセプトとして生まれた精進コスメは、動物由来成分不使用で動物実験を一切行っていません。

ヴィーガン対応はもちろんのこと、イスラム教徒にとって安全なガイドラインであるハラル認証も取得しています。

引用:精進コスメ 株式会社レイスコスメティックス

資生堂

資生堂は「情報による保証」や「代替法による保証」「ヒトによる最終確認(医師管理下のパッチテストなど)」の3ステップで原材料の安全性を確保できるとして、2013年に動物実験を廃止しています。

引用:資生堂公式サイト

私たち一人一人ができる大切なこと

動物実験について知ったら、私たち一人一人ができることをぜひ考えてみてください。

手に取ったコスメが動物実験の行われたものと知ったらどうでしょうか。

自分が美しくなるためのコスメが、動物たちの犠牲の上で作られていると知っても使い続けることができるでしょうか。

  • 動物が犠牲になることなく、世に出されたコスメを積極的に手に取ること
  • 動物実験を行っていない化粧品があることを周りに伝えること
  • 動物実験というものがあることを知ること

まずはここから始めてみてください。

このような行為を続けることが世界の動物実験を減らしていく何よりの手立てとなります。

動物たちを犠牲にすることのない社会を目指して

動物実験について初めて知った方は、さまざまな面でショックを受けたのではないでしょうか。

これまでの人間の歴史の中では生きるために他の生物の生命を犠牲にすることは、やむを得ない面もありました。

また医療の分野については、まだ動物実験の必要性があるのも事実です。

しかし化粧品などの嗜好品において、多くの動物たちに犠牲を強いることはもはや許されることではありません。

この記事を参考に動物実験についての思いを巡らせ、少しでも世界から動物たちの犠牲を減らすために何ができるかを考えてみてください。

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