生物多様性

生物多様性の重要性は?危機を理解して私たちにできることを

生物多様性は、地球上に生命が存在するために重要です。

自然環境のなかで、異なる遺伝子をもった種類の生物がそれぞれ補いあって、地球という生態系を安定させています。

いま世界は、第六の大量絶滅期の時代。

熱帯雨林が伐採され、野生動植物が減少し、100万種類もの生物が絶滅の危機に瀕しています。

昆虫を除く動植物は4種に1種が絶滅の危機にたたされ、これまでにない規模とスピードで生物多様性が失われている現状です。

自然の恩恵をうける私たちこそ、生物多様性の重要性を正しく理解して、生態系の調和が持続するように行動を起こしていきましょう。

生物多様性とは?わかりやすく解説

生物多様性とは、地球のそれぞれの場所に固有の自然があり、自然のなかで特有の生物が補いあって暮らしていることです。

生活に欠かせない水や食糧は生物多様性によって作られ、守られています。

生物多様性は下記の3つの段階があります。

  • 生態系の多様性
  • 種の多様性
  • 遺伝子の多様性

生態系の多様性

河川、海、珊瑚礁、湿地、干潟、森、山など、多様な自然環境があります。

カエルは、オタマジャクシの時代は水のなかで成長し、大きくなると陸で暮らしますよね。

生物は、成長段階によって生きる場所を変えており、環境はシームレスに繋がっています。

森から栄養が海に流れて藻ができることで、海の生物が生きられるように、森、河川、海が繋がっているのです。

多様な生態系により、いろんな生物が恩恵をうけ、多様な種が生息できます。

種の多様性

動物や植物、からだの中の細菌も含めて、いろんな種類の生き物が地球上で暮らしています。

昆虫が植物を食べて、カエルが昆虫を食べて、鷹がカエルを食べる。

という種の繋がりを想像してください。

カエルがいなくなったら、どうなるでしょうか。

鷹とカエルが消え、増えた昆虫が植物を食べ尽くしてしまうので、結果、エサをなくした昆虫も絶滅してしまいます。

生物は多様だから補えあえます。

つまり、種の多様性が失われてしまうと、生態系が崩壊してしまうのです。

遺伝子の多様性

暑さに強かったり、寒さに強かったり、

生きる環境によって遺伝子は多様です。

遺伝子の多様性は、種の安定と存続、そして進化を助長します。

生物全員が暑さに弱ければ、地球温暖化による酷暑で全滅してしまいますし、全員が病原菌に弱ければ、いまごろウイルスのパンデミックで人類は滅亡しているでしょう。

遺伝子が多様性だからこそ、種が生き残るチャンスを得られ、環境に適応して進化していくのです。

生物多様性の危機|なぜ失われるの?

IUCN(国際自然保護連合)により、絶滅危惧種のレッドリストが公表されていますが、生物多様性の危機は動物に限った話ではありません。

昆虫を除く2割の動植物が絶滅危機と公表されています。

森林が、過去25年で日本の面積3倍が失われていたり、海をみると、1870年以降サンゴ礁の半分が消失していたり、野生の哺乳類が先史時代から82%減少していたりと人間由来で自然の恩恵が失われています。

なぜ生物多様性の危機が起きるのか、見ていきましょう。

農地の拡大

国連報告書によると、今後、世界の人口は2050年に約97億人、今世紀末には110億人へ増加していくと発表されています。

人口が増えると、大豆やとうもろこしなど穀物や、牛や豚など家畜が必要になり、そのために森林やアマゾンの熱帯雨林が伐採されています。

いまや陸地の3分の1が農地と言われており、農地化する場所の自然環境が失われています。

関連記事:森林破壊が動物に与える影響と森を守る取り組み

毛皮や魚の乱獲

ミンクやフォックス、ラビットなど、動物の毛皮を使ったアパレル商品の流行とともに、毛皮の乱獲が進みました。

日本カワウソが絶滅した理由も、毛皮の乱獲です。

さらに、漁業資源も、全体の約3割が乱獲といわれています。

日本人の大好きなマグロを捕獲するために、大きな網を漁で使用すると、マグロ以外の海の生き物が乱獲被害を受けるのは有名な話です。

排水による汚染

産業排水や工業排水、生活排水により、河川や海が汚染されると、

プランクトンが大量発生し、富栄養化により酸素不足で生き物が生活できなくなります。

企業責任として、汚染物質を排出していないかのモニタリングや、私たち生活者としても、下水処理があるからいいや、ではなく、食べ残しや油のような有機物を水に流さないような意識が大切です。

外来種による攻撃

生物多様性の調和をみだす外来種には注意が必要です。

アメリカザリガニやウシガエル、ブラックバス、アライグマ、そして身近な猫など、野生で生活することで他の生物を絶滅に追いやる危険性があります。

「ダーウィンの悪夢」というアカデミー賞の受賞歴があるドキュメンタリー映画で紹介されていて驚愕したのですが、東アフリカにあるビクトリア湖に放出されたナイルパーチという白身魚の影響で、約400種の固有種が約半分絶滅したそうです。

ナイルパーチの主な輸出先は欧州と日本。

何気なく食べていた白身魚が知らないところで、大量の生物多様性を破壊していたかと思うと驚きです。

そして、映画では失われた生態系による周辺地域の貧困問題も描かれており、生物と人間の繋がりも深刻に感じました。

余談ですが、筆者は大学四年時に東アフリカのウガンダで、国連ユースボランティアとして半年間活動していました。アフリカの真珠と呼ばれるウガンダの観光資源が、ビクトリア湖。現地の友人は、ビーチと呼んでいて、遊びに行った時に食べたのが「ナイルパーチ」でした。美味しい!と食べた記憶があるのですが、生物多様性の欠乏や貧困問題に関わりがあることは知らず…。改めて、「知る」ことの大切さを本記事を書きながら考えています。

気候変動

CO2排出により地球温暖化が進むと、気温が上昇し、雨が降らない干ばつ地域がうまれたり、海の水温が上がります。

環境変化にすぐ適応できない生物は、その場で生活ができなくなり、命を落とす原因となります。

真夏の猛暑や大型の台風など、気候変動が猛威をふるう昨今、私たちの生態系を維持するために、できる行動をとり、阻止していきたいですね。

生物多様性を守ることは、私たち人間だけでなく、地球全体の生物が安定して生活するために欠かせません。

重要性を理解したうえで、本記事を読んでいる今この瞬間から私たちができる取り組みを見ていきましょう。

関連記事:SDGsを学ぼう!目標 13「気候変動に具体的な対策を」について

日本は食品ロス大国!買い過ぎない

農林水産省の発表によると、令和2年度の日本の食糧自給率は37%、残りの約6割は海外からの輸入に頼っています。

そして、日本では年間612万トンの食品が廃棄されています。

参照:農林水産省

つまり、海外で環境負荷をかけてつくったものを輸入して捨てているのが現状です。

野菜、果物は、無農薬で有機栽培。

牛肉や豚肉などのお肉は、エサとなる穀物や水、エネルギー、そして必要な土地など、環境負荷が高いので、食べ過ぎないという意識を持つことが大切です。

筆者は筋トレが趣味なので、タンパク質豊富なお肉を食べることが好きなのですが、環境にすこしでも配慮するために、自然の草だけ食べて育った牛のお肉にアンテナを貼っています。

日本での地産地消の取り組みを応援し、日々の消費生活のなかで、買い過ぎない、作り過ぎない、頼み過ぎない行動を1人1人がとれば、確実に状況は変わっていくでしょう。

関連記事:【日本】深刻なフードロスの現状とは?削減に必要な3つの取り組み

環境に配慮したラベルをチェック

水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた天然の水産物にMSC「海のエコラベル」がついていたり、環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物に環境配慮を認めるラベルを意識的に探してみてください。

東南アジアの森林破壊で有名なパーム油は、製品化のタイミングで、パーム油ではなく、植物油脂、ショートニング、界面活性剤など、他名称で記載されているので注意が必要です。

持続可能なパーム由来原料を使用している製品には、RSPO認証ラベルがついているので、認証ラベルのついた食品や洗剤を買うようにしましょう。

洋服は長く着よう!スローファッションが流行中

ファストファッションの流行に疑問をもつことから始めましょう。

「ザトゥルーコスト」というドキュメンタリー映画で、ファストファッションのアパレル工場で不当に扱われる人々の人権問題が紹介されていたり、環境配慮の点で指摘すると、1着の洋服をつくるのに大量の水を必要とします。

そして、汚染された水が街や河川、海にながれ、生物多様性を失う源流です。

近年では、ファストファッションと対照的な存在として、スローファッションが流行しています。

受注してから製造する、という流れで必要以上に作らず、オーガニックやリサイクルマテリアルなど、環境配慮にこだわった素材で洋服がつくられています。

サステナブルへのこだわり故に、まだまだ価格帯は少し高いため、着る服すべてを、ではなく、まずは10着に1着はサステナブルという意識をもつことが大切です。

関連記事:その服は本当に必要?ファッション業界が取り組むSDGsを紹介

まとめ

生物多様性の重要性について紹介しました。

虫嫌いのひとは、お家にはいってきた虫をバシッと叩いて潰している光景が日常茶飯事だと思いますが、だからといってその虫も絶滅していいわけではありません。

インフルエンザワクチンのタミフル原料に使われているなもなき植物のように、生物の存在はどこで役立つかわかりません。

もしかしたら、昨日潰したハエも、将来人間の命を救う救世主になる可能性もあるのです。

自然の恩恵をうけるありがたさを改めて感じ、母なる大地と、母なる地球を守るために、日々できることから始めてみませんか。

すこし余裕があれば、環境保全団体への寄付やボランティア活動への参加などもおすすめです。

協力しあいながら、生物多様性を守り、安定した地球環境をつくっていきましょう!

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