格差・貧困・人権

フェアトレードとsdgsの関係性は?貧困の連鎖を断つ取り組み

フェアトレードは、貿易を通した国際協力です。

コーヒーやチョコレート、紅茶など身近な食べ物や飲み物が、どこで誰によって作られたか、わかりますか?

利益を最大化する貿易ではなく、つくり手の生活や福祉を考えた公正な取引を実現することがフェアトレードの目的です。

公正な取引で経済的自立が実現されると、児童労働や差別の問題や自然破壊の問題など関連する社会問題が解決に近づきます。

SDGsが目指すだれもが幸せに生きられる持続可能な社会を2030年までに実現するために、フェアトレードとSDGsの関連性を知り、身近なアクションとして貧困の連鎖を断ち切る取り組みを見ていきましょう!

世界の貿易はフェアじゃない

フェアトレードを知るために、まずは世界の貿易がフェアじゃない現状を認識するところから始めましょう。

世界人口の農業従事者は約4割。

特に、開発途上国に住む方の多くが農業に従事していて、つくった農作物を売ることで得たお金で生計を立てています。

しかし、小規模や零細農家さんは自らのチカラで販路を獲得する事が困難であるゆえ、特定ルートで街で販売するしかありませんが、市場には同じ農作物が溢れているため、買い叩かれてしまうのが現状です。

バナナ一房は100円より50円、50円より20円で買いたいという経済合理性が働くことは、ーパーで普段買い物をする私たちにとっても想像しやすいですよね。

農家さんの希望価格ではなく、言い値の不当な価格取引が行われると、経済的自立をするために量を増やそうとします。

子どもを学校へ通わせずに働かせたり、大規模農地のために自然破壊をしたり、品質を保つために大量の農薬をまいて健康被害に繋がったり、と負の連鎖が始まります。

国際フェアトレード基準

負の連鎖を断ち切るために、適正価格で行われる取引を増やす必要があります。

国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)は公正な取引を認定するために、国際フェアトレード基準を定めており、大きくわけて経済的基準・社会的基準・環境的基準の3基準が定められています。

特に大きな特徴は、下記の保証をしている点です。

フェアトレード最低価格の保証

生産地域の社会発展に使われる資金としてフェアトレードプレミアム(奨励金)を生産者に保証

コーヒーやバナナ、ハチミツ、チョコレート、ドライフルーツなど、国際フェアトレード認証ラベルや世界フェアトレード連盟保証マーク身近な食品を見つけてみてください。

適正な価格で取引され、環境に配慮しながら、安全な労働環境や差別の禁止など人へも丁寧に配慮された食品や製品にアンテナを貼って消費行動をとることが、私たちにできるフェアトレードへのアクションです。

SDGsに力を入れるメーカーにとっては、この国際フェアトレード基準の認証をうけているかどうかが質を保証する上で欠かせない指標となっています。

参照:国際フェアトレード基準

フェアトレードとSDGsの関係性

フェアトレードで貿易のしくみを公正にすることで、開発途上国の小規模農家さんを中心に貧困から抜け出すきっかけとなり、飢餓や児童労働、強制労働、人権侵害、環境破壊など様々な社会問題の解決と紐付いています。

SDGsを達成するために欠かせない、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(誰も取り残さない)な考え方を大切に、人や動植物、地球環境すべてに配慮した貿易が求められています。

フェアトレードはSDGsが掲げる17の目標ほぼすべてに関係していますが、特に、国際フェアトレード認証が大きく関わる8つの目標について関連性を見ていきましょう。

SDGs1:貧困をなくそう

開発途上国ではたらく小規模農家さんが貧困から抜け出すために、収穫量や品質にみあった適切な価格で取引されることが大切です。

製品メーカーにとって、生産から輸出入、加工の工程は原価になるため、少しでも利益を増やすために、原価を抑えようとしてきたこれまでの経済が貧困課題を存続していると言っても過言ではありません。

農家の希望価格で農作物を購入したり、適正な賃金を支払うことが貧困解決にとって大きな企業の責任です。

国際フェアトレード認証が決めている最低保証価格は、市場価格が急に低下しても生産者を守る一助を成しています。

関連記事:日本も他人事ではない?SDGs目標1「貧困をなくそう」

SDGs2:飢餓をゼロに

適正価格の取引が増えると、経済的自立により農家さんの飢餓状態が開放されるだけでなく、世界の食料自給率を強化する取り組みに繋がります。

人にも地球にも配慮された食べ物の流通が増えることで開発途上国でなく、私たち先進国で生きる人にとっても恩恵を受けることが出来るWin-Winな関係性を築けますね。

関連記事:あらゆる飢餓に終止符を|SDGs目標2「飢餓をゼロに」について

SDGs5:ジェンダー平等を実現しよう

国際フェアトレード基準では、差別やセクハラ、暴力を禁止しています。

特に多くの開発途上国ではいまだに男尊女卑の考え方が浸透しているため、リーダーシップが身につく研修機会を増やしたり、スタートアップの開業資金を補助することで女性の起業家や経営者が増える取り組みが行われています。

男性か女性かの区別なく、頑張って働く誰もが評価される世の中を実現しましょう。

関連記事:【SDGs目標5】ジェンダー平等への取り組み~一人一人ができること~

SDGs8:働きがいも経済成長も

1,000人以上の犠牲者が出たバングラデシュのラナプラザ崩壊事件を覚えていますか。

不当な賃金だけでなく、不当な労働環境で働かされている現状も大きな問題です。

ILO憲章に基づくフェアトレード基準は、労働者の権利を守り、よりよい労働条件と労働環境を保証しています。

さらに、児童労働や強制労働がなくなる配慮についても、啓蒙活動が行われたり、仕組みづくりが行われています。

関連記事:SDGs目標8「働きがいも経済成長も」|日本と世界の現状と事例を紹介

SDGs12:つくる責任、つかう責任

生産側と消費側で、それぞれ持続可能な社会を創るために責任をもつべきです。

公正な貿易取引が行われる前提で、生産側は品質改善や労働環境の改善、環境配慮が大切であり、消費側は価格の安さだけではなく、フェアトレードの認証をうけて生産された食品や加工品を積極的に選ぶことが大切です。

SDGs13:気候変動に具体的な対策を

いまだに開発途上国の多くでは、買取してもらえる農作物を増やすために、農地に大量の農薬が使われています。

大量の農薬は人間の健康被害だけでなく、農地の再生を妨げて荒廃させてしまう被害も起こしています。

環境への負荷を最小限に抑えた農法で、ソーラーシェアリング等を活用してエネルギー使用削減をしていくことで、気候変動対策となり持続可能な環境をつくることができます。

さらに、フェアトレードは植林や灌漑の改善、作物の多様化をすすめることで、気候変動への耐性を高めるだけでなく、農家さんの新たな収入源を増やすことへも寄与しています。

関連記事:SDGsを学ぼう!目標 13「気候変動に具体的な対策を」について

SDGs16:平和と公正をすべての人に

世界基準のなかでも、国際フェアトレード基準は農家と労働者が50%の議決権を有しています。

フェアトレード製品の販売によって得たお金から奨励金を生み出し、使いみちについても、農家と労働者が主体となって決めていくプロセスに、現場の意思が反映される仕組みになっています。

誰かに決められるのではなく、小規模生産者や労働者が自ら決めていくことがさらなる公正取引を進めていくでしょう。

関連記事:SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?世界・日本企業の取り組み事例

SDGs17:パートナーシップで目標を達成しよう

フェアトレードは労働者だけとか、消費者だけとか、誰かが頑張るのではなく、労働者も消費者も企業も政府も活動家もみんなで連携を強めることにより、誰もが取り残されない社会を実現できます。

コロンビア政府と大企業のネスレ、コーヒー生産者組合が連携して退職金プロジェクトを立ち上げるなど、ステークホルダー同士で協力しあってフェアトレードを進めていくことがSDGsの目標達成に欠かせないアクションとなっています。

フェアトレードでSDGsへ取り組む企業の事例

フェアトレード認証を受けた原材料をつかったチョコレートのブランドや、貧困課題の解決を主眼に置くレザーブランドなど、フェアトレードを通してSDGsへ取り組む企業の取り組みを見ていきましょう。

オランダでNo.1!サステナブルなチョコレート

オランダでシェアNo.1のチョコレート「Tony’s Chocolonely」を知っていますか。

日本では有楽町マルイなどでPOPUPショップが開催されていたことで話題になりました。

フェアトレード認証をうけた原材料を使用するなど5つの調達原則を設けているだけでなく、カカオ農園での強制労働をなくすプロジェクトを行っています。

不揃いな形をしたチョコレートは業界の不平等を表しており、 大人だけでなく子どもにもフェアじゃない取引の現実と公正な取引の推進を伝えています。

私も催事で購入して食べたところ…チョコレートの味が濃く美味しかったです!

背景に意味があり、チョコレートとしても美味しい…口コミをしない理由がないですね。

参照:Tony’s Chocolonely

スターバックスのコーヒー調達

最近、いつスターバックスでコーヒーを飲みましたか?

スターバックスは世界で最も多くの国際フェアトレード認証のコーヒー豆を購買しているコーヒー会社です。

C.A.F.E.プラクティスという独自の調達ガイドラインを定め、適正な価格が生産者に支払われているか、労働環境や生産環境へ配慮されているか、というフェアトレード基準を満たしたコーヒー豆を厳選しています。

世界的に身近な企業がエシカル推進をしてくれると、安心して足を運べて嬉しいですね。

参照:スターバックスジャパン

貧困解決が目的のソーシャルビジネス

社会問題の解決しかしない、ソーシャルビジネスのプラットフォーム「ボーダレスジャパン」では、フェアトレード推進にも力をいれています。

バングラデシュの自社工場で直接雇用を増やして貧困課題を解決する「ビジネスレザーファクトリー」では、適切な賃金が支払われているかを判断するために定期的な賃金改定が行われています。

技術向上にあわせて賃金アップをして、あわせて国内の製品価格の値上げを行なっています。

さらに、障害のある方でも働きやすいスロープを工場内に設けたり、シングルマザーでも働きやすいようにデイケアセンターやアフタースクールを併設しており、他ではなかなか仕事に就けない方を中心に雇っています。

フェアトレード認証に関わらず、企業責任として貧困課題や教育格差、暴力の是正など様々な問題の解決に務める行動が大切ですね。

他にも下記記事で身近なフェアトレード商品を紹介しています。

フェアトレード商品とは?できることや問題点をわかりやすく解説!

まとめ

フェアトレードとSDGsは、関わりが強く誰も取り残さない持続可能な社会をつくるための大切なアクションです。

開発途上国から原料を輸入している企業は、改めて適切な価格で取引されているかを見直すキッカケにして欲しいですし、消費者としても、フェアトレードの製品を購入するのが当たり前の世の中になるといいな、とおもいます。

もはや、安ければ何でもいい、という時代遅れになっています。

生産者も企業も消費者も、そして地球環境にとっても良い、公正な取引を普及させてみんなで持続可能な社会を創っていきましょう!

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