SDGsとは何かわかりやすく解説!3つの取り組み事例を紹介
最近、テレビや雑誌といった多くのメディアで注目されているのが、SDGsです。
SDGsはエス・ディー・ジーズと読み、私たちの日常のあらゆる場面に大きく関わっています。
「なんとなく聞いたことがあるけれど、よく知らない」という方は多いのではないでしょうか。
今回は、「SDGsとは何か」をわかりやすく紹介していきます。
SDGsとは「持続可能な開発目標」のこと
現代もなお、世界各地で環境問題、紛争、貧困、人権問題など、さまざまな問題が起こっています。
SDGsとは、それらの問題を解決するための、世界中の一人ひとりが取り組むべき持続可能な開発目標のことです。
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳され、日本を含め193の国連加盟国が参加した2015年の国連サミットで採択されました。
前身となったのは2000年に国際ミレニアム・サミットで設定されたMDGs(ミレニアム開発目標)です。
MDGsは開発途上国の貧困削減をメインに、2015年までの達成を掲げ、8つの目標と21のターゲットを設定していました。
「極度の貧困」においては改善がみられたものの、地域格差や最貧困層へのアプローチが不十分との指摘もあります。
そして、それを引き継いだのがSDGs。
「誰一人取り残さない」を原則として、世界全体の達成目標を定めました。
現在、SDGsは2030年を達成の年限にしており、世界中の国や企業がさまざまなことに取り組んでいます。
SDGsが取り上げられるようになったきっかけ
SDGsが最初に話題となったのは、2015年の国連サミットです。
当時、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として提示されました。
その後、2017年のダボス会議で12兆を超える経済価値や、3億8,000万人の雇用が創出されるなどSDGsの経済効果が示されたことから、企業の成長戦略としても注目されるようになりました。
SDGs17の目標をわかりやすく
SDGsは、17の目標によって構成されています。
「接続可能な開発目標」と聞くと、国や企業、団体でなければ取り組めないほど、難易度の高い目標を想像する方も多いのではないでしょうか。
実際にどのような目標が掲げられているのか、ここではSDGsの17の目標をわかりやすく紹介していきます。
1.貧困をなくそう
第1の目標は、「2030年までに、あらゆる貧困をなくすこと」です。
SDGsでは、貧困を「光熱費や食費など1日あたりの生活費用が1.25米ドル未満しか使えない状態」として定義しています。
1.25米ドルは日本円で約135円しかなく、絶対的貧困ラインと呼ばれる国際的な基準です。
現在は1.9米ドルに引き上げられましたが、それでも約200円に過ぎません。
SDGsの第1の目標は、このように極度に貧しいとされる人をなくすことです。
たとえば収入・資産を得る機会や、サービスを受けられる権利を平等に得られるような仕組み作りを行います。
貧困の現状については、以下の記事で詳しく説明しています。
2.飢餓をゼロに
第2の目標は、「2030年までに世界中の飢餓を撲滅すること」です。
貧困層など脆弱な立場にある人々も、1年中、安全で栄養のある食糧を得られる社会を目指します。
たとえば技術開発やインフラ整備、投資などの対策で、農業生産性や災害時の適応能力を向上させます。
農業に携わる人々が知識や土地、資源を得たり、食糧を売ったりできる機会が平等に得られる対策も必要です。
選択肢や生産性向上のための機会を多く得られることで、農業に携わる人々の収入アップも目指します。
飢餓の現状については、以下の記事で詳しく説明しています。
3.すべての人に健康と福祉を
第3の目標は、「あらゆる年齢の人々の健康的な生活の確保や、福祉の推進を目指すこと」です。
たとえば2030年までに、妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減しようという目標があります。
伝染病をなくし、感染症に対処して、5歳未満の子どもの死亡率を引き下げることも目標のひとつです。
病気だけではなく、麻薬やアルコール、交通事故など健康を脅かすさまざまな要因が予防対象とされています。
4.質の高い教育をみんなに
第4の目標は、「すべての人々が性別に関係なく公正で質の高い教育を修了できるようにすること」です。
子どもやジェンダー、障害に配慮した教育施設の設置や改良、平等に学べる機会の提供などが求められます。
仕事に関する技術、知識を得られる教育や訓練を、誰もが受けられる環境作りは、SDGs全体に関係します。
技術と知識を得た若者や大人が増えることで、SDGsの他の目標達成にもつながるためです。
5.ジェンダー平等を実現しよう
第5の目標は、「男女平等に能力を伸ばし、可能性を広げられる社会を目指すこと」です。
現在もあらゆる国や地域で女性や女児の売り買い、強制結婚、女性器を切除する慣習などが残っています。
性別に関係なく社会活動への参加が認められ、財産、健康、権利などが守られる社会の仕組みを作ります。
ジェンダー平等の取り組みについては、以下の記事で詳しく説明しています。
【SDGs目標5】ジェンダー平等への取り組み~一人一人ができること~
6.安全な水とトイレを世界中に
第6の目標は、「すべての人が安全で衛生的な水とトイレを確保でき、安価に利用できるようにすること」です。
処理しないまま河川に流している排水を2030年までに半分に減らし、安全な水の再利用を浸透させます。
現在よりも水の再利用や使用を効率化することで、水不足で苦しむ地域や人々を減らすことが目的です。
水不足の原因については、以下の記事で詳しく説明しています。
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
第7の目標は、「すべての人が安全で信頼できる現代的エネルギーを、安く手に入れられるようにすること」です。
現在、世界中で7億人以上の人々が電力を利用できない生活環境にいます。
彼らを含んだ世界中の人々が、安心してエネルギーを使用できる社会の仕組み作りが必要です。
再生可能エネルギーの使用割合を増やしたり、技術へ投資を行ったりと、エネルギー効率を良くしていきます。
世界・日本の取り組み事例|SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
8.働きがいも経済成長も
第8の目標は、「各国の状況に応じて、人々が経済的な豊かさを得られるようにすること」です。
ターゲットには、「開発途上国では毎年少なくとも7%以上のGDP(国内総生産)の成長を続ける」ことが掲げられています。
この「7%」の水準は、この目標を実現するために必要な数値として設定されたと考えられます。
第8目標が目指す未来は、「働く人の権利が守られていること」「あらゆる人の生活が安定していること」ですが、後発開発途上国ではまだまだ貧困状態です。
現在でも教育が受けられず、児童労働における賃金の安さや失業率に悩んでいる地域が多くあります。
これらの課題を解決するには、「生産力の向上」が何よりも必要です。
生産力を向上させるためには、
- 雇用の創出
- 平等な雇用機会の提供
- 技術の提供
- 保険システムの促進
の要素が必要になります。これらをGDP成長率で表すとしましょう。
近年の後発開発途上国におけるGDP成長率の平均は2005~2009年で4.7%、2010~2014年では2.6%となっています。
参照:「平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境省)より
これらのデータから、第8の目標を実現するための妥当な生産力を表しているといえます。
たとえばほとんどを人の手に頼っている産業に対して、技術の向上やイノベーションで生産性を上げます。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
第9の目標は、「強靭なインフラ整備によって産業化を推進し、技術革新の拡大を目指すこと」です。
インフラとは、電気、ガス、水道、交通、インターネットなど、人々の生活を支える基盤を指します。
この目標では、道路、空港、港などの地域・越境インフラを含んだすべてのインフラを、高品質で信頼できるものになるよう開発を進めていきます。
強靭なインフラを実現するために重要なのは、「例え崩れてもすぐ元に戻る強い基盤をつくること」「すべての人がアクセスできること」です。
具体的な施策を挙げると、開発途上国における安価で普遍的なインターネット環境の提供や、高効率なポンプの導入支援などです。
開発途上国の小規模な産業も、平等に安価な金融サービスの利用や市場への統合ができるようになります。
10.人や国の不平等をなくそう
第10の目標は、「国内および国家間での不平等や格差を是正すること」です。
年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位などを理由に起こる差別をなくします。
国家間の経済的地位や政治的な要素を含む格差や、差別につながる法律の撤廃なども行います。
誰もが平等な機会や公平な成果を得ることができるよう、税制など政策の見直しも不可欠です。
11.住み続けられるまちづくりを
第11の目標は、「安全で安価な住宅や基本的サービスをすべての人々が利用できるようにすること」です。
災害に強い都市や居住地を増やし、農村部間のつながりを支援することで、安心して過ごせる環境を作ります。
日本において想定される災害は地震、水害、火山噴火による影響などです。
例え災害が起きても、その被害を最小限に抑えられるよう、免震化や避難経路の確保、災害情報の共有システムなどが必要です。
廃棄物や大気の質の管理によって、人々が受ける環境上の悪影響を防ぐことも大切です。
12.つくる責任 つかう責任
第12の目標は、「持続可能な消費と生産のサイクルを確保すること」です。
達成する目的は、資源の持続可能性を高めることにあり、そのためには「省エネ」「食品ロスの削減」「廃棄物の発生抑止、再利用、再生利用」といった取り組みが必要です。
なかでも、食品ロスは気候変動や貧困問題に影響を及ぼしており、2030年までに一人当たりの食糧廃棄量を半減させることがターゲットのひとつにも定められました。
「食糧廃棄量の半減」が実現できれば、以下のような効果が得られるでしょう。
- 廃棄コストの削減
- 生産者の心理的負担の軽減
- 貧困問題の抑止
- 食費の節約
生産工程で発生するフードロスの要因は、規格外商品の廃棄、自然災害による影響、鳥獣被害などさまざまですが、台風では被害額が100億円以上にのぼることもあります。
第12の目標を実現することは、持続可能性の高い生産体制の実現や食糧の廃棄コストの削減だけでなく、生産者の心理的負担を削減するメリットもあります。
また、食品廃棄の約半分は家庭から発生し、そのうち約46%が食品ロスとなっています。
家庭における食品ロスが削減できれば、貧困問題の抑止や、食費の節約につながるでしょう。
出典:「食品ロスとは」(農林水産省)より
また、日本は食糧自給率が低いことから、人口や食糧需要の増加に対応できない可能性が高く、家庭での食品ロスも深刻に捉えていく必要があります。
他国に比べ、より持続可能性の高い生産体制が必要とされているといえるでしょう。
食品ロス(フードロス)については、以下の記事で詳しく説明しています。
フードロスからSDGsを考える!自分たちができる取り組みを知ろう
13.気候変動に具体的な対策を
第13の目標は、「すべての国々が気候変動とその影響に対する適応能力を強化すること」です。
気候変動の緩和や影響、早期警戒など、環境問題に関する教育や啓発を行い、制度の改善につなげます。
各国は気候変動に関する対策を、政策や戦略、計画に盛り込むことが求められます。
14.海の豊かさを守ろう
第14の目標は、「2025年までに海洋ごみや富栄養化などによる海洋汚染を防止したり、軽減させたりすること」です。
富栄養化とは、リンや窒素など、一部の生物にとっての栄養が増えすぎてしまうことを指します。富栄養化は赤潮の原因にもなり、海の生態系に影響を与えるおそれがあるため、対策が必要です。
魚介類など水産資源を守るために、科学的な管理計画で、適切な漁業を行います。
科学的管理計画をするうえで重要なのは、海洋保護区(※)の管理方法を設定することです。
対象とする海の特徴に合った保護区を設定するほか、季節などの要素もふまえて、規制範囲や管理方法を変更する必要があります。
また、既存の保護区においては、自然再生や里海(※)を実現する取り組みを行うことも大切です。
(※)海洋保護区・・・生態系維持のために、開発や漁業、観光に一定の規制をした海域
(※)里海・・・人の手を加えることで多様性を実現した海域
海洋汚染の原因については、以下の記事で詳しく説明しています。
15.陸の豊かさも守ろう
第15の目標は、「陸上生態系の保護などで砂漠化を防ぎ、多様な生物が生きられる環境を保全すること」です。
鳥類や哺乳類、両生類、針葉樹の中には、絶滅の危機に瀕している種類が多くあります。
たとえば、以下のような生物が絶滅危惧種として登録されています。
- シマフクロウ
- 二ホンカワウソ
- アベサンショウウオ
- ヤツガタケトウヒ
森林、湿地、山地、乾燥地など陸上生態系を守り、回復させ、生物の多様性が損なわれないようにします。
また、河川など内陸の淡水地域の生態系も保護対象です。
16.平和と公正をすべての人に
第16の目標は、「すべての人が受け入れられ、制度や法で守られる社会を目指すこと」です。
子どもに対して行われる虐待、搾取、人身売買、暴力、拷問などをなくしたり、暴力による死亡率を減少させたりします。
たとえば法律に反する資金や武器の取引を削減したり、組織的な犯罪をなくしたりすることが必要です。
国境を超える問題に対しても、開発途上国の国際的な機関への参加を広げ、各国の専門機関の力を強めていきます。
17パートナーシップで目標を達成しよう
第17の目標は、「すべての人が協力しあえるグローバル・パートナーシップの強化によって、SDGsを達成すること」です。
SDGsの達成には、「誰一人取り残さない」の原則のもと、企業、研究者、地域、家庭、個人のすべてが協力することが必要です。
先進国では、開発途上国へ向けて以下のような働きかけが必要とされています。
- 資金援助
- 技術の提供と普及
- 公平な貿易体制の確立
- 専門的知見や技術、情報の共有
低所得国は徴税能力が低いことから、国内での資金調達が難しい側面があります。
そのため、海外からの資金援助が必要になります。
また、開発途上国では技術開発に関する政策は少なく、教育機関や研究などに投資をしていません。
資金が十分に集まっても、イノベーションを起こせるだけの基盤が整っていないことから、技術力の提供も求められています。
さらに、貿易体制の不平等も是正していく必要があるでしょう。
貿易においては、開発途上国よりも経済力や需要のある先進国の立場が強くなる傾向があります。
このような不利な取引を是正するには、先進国側からルールの遵守やフェアトレードを推進していく必要があるのです。
わかりやすい!身近なSDGsの取り組み
これまでSDGsの17の目標を解説してきましたが、政策や支援など、内容が難しいと感じた方は多いでしょう。
そこで、次は日常生活の中で誰もが実践できるような、身近なSDGsの取り組みを紹介します。
まずはここで紹介するもののうち、気軽に取り組めることから始めてみてください。
食品ロスの解消/食育活動
食糧に関係する目標として、「つくる責任 つかう責任」が挙げられます。
食品ロスの解消には、料理は食べられる分だけ調理したり、食べ残しをしなかったりすることで、食品ロスの解消につながるでしょう。
また、普段から食に関する社会課題を意識するために、食育活動をするなどの対策があります。
【取り組み事例】株式会社昆虫食のentomo
昆虫を使用した製品の販売をする株式会社昆虫食entomo。
省資源パッケージの採用や、生産においてLEDやIoTなどの自動化を積極的に導入しており、環境負荷の軽減や効率的な生産体制にも取り組んでいます。
環境にやさしい素材/リサイクルできる素材を選ぶ
持続可能な開発目標の達成を目指すためには、環境にやさしい素材や方法を選びましょう。
たとえばオーガニックコットンが使用されている衣料品を選んだり、リサイクル用品を利用したりします。
使わなくなった衣料品を、リサイクル業者に買い取ってもらう方法もあります。
他にも、衣料品の買い物にもマイバックを持ち歩くことは、身近にできる取り組みのひとつです。
【取り組み事例】シャボン玉石けん株式会社
「健康な身体ときれいな水を守る」の思いのもと、石鹸成分のみの無添加石鹸を製造しています。
原料油脂のパーム油は持続可能な生産に取り組むマレーシアから取り寄せるなど、環境保全の視点をふまえた生産体制を整えています。
多様性の尊重
SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方や、目標17「パートナーシップで目標を実現しよう」を達成するには、それぞれの多様性を尊重しあうことが必要です。
性別や年齢、宗教、障害など人によって異なる部分を認め、互いに協力する視点をもつと良いでしょう。
メディアやSNSなどを通して、自分とは異なる境遇の人のことを知ったり、意見を発信したりすることも多様性を尊重するひとつの行動といえます。
【取り組み事例】ミス日本協会
社会をよりよくする人を生み出す成長のステージとして「ミス日本(美人コンテスト)」を開催。
ファイナリストや受賞者へ、教育プログラムや社会貢献活動の機会の提供をおこなうなど、女性が活躍する場を広めていくためのサポートをしています。
まとめ
SDGsには17の目標があり、すべてが密接につながっています。
SDGsで掲げられた目標の中には、個人が日常生活の中で取り組めるものも少なくありません。
あなたも日々の業務やプライベートで、SDGsの達成につながることは何か、探してみてはいかがでしょうか。
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