エシカルライフ

フェアトレードとは?認証の仕組みから企業の導入ステップまで解説

「フェアトレードは個人の買い物の話」と感じるサステナビリティ担当者は、まだ多いかもしれません。

しかし、EU「CS3D(CSDDD:Corporate Sustainability Due Diligence Directive:企業持続可能性デューデリジェンス指令)*」の発効や、ESG投資が本格化している現在、フェアトレードは企業にもさまざまなメリットをもたらします。

例えば、ESG評価・人権デューデリジェンス対応・ブランド価値の向上・調達リスクの低減などです。

本記事では、フェアトレードの基礎知識から認証制度・経営メリット・導入ステップまで、実務担当者の視点から詳しく解説します。

*企業がサプライチェーンや調達業務から生じるサステナビリティに関連するリスクを特定し、軽減するための規制

フェアトレードとは?——基礎知識を3分で整理する

フェアトレードは、単に「認証を受けた商品を購入する」という個人の選択にとどまらず、企業の調達方針やESGレポートでの評価へと、その位置づけが大きく変わっています。

まずはフェアトレードの基礎知識を簡単にご紹介します。

定義と歴史的背景

フェアトレードとは、開発途上国で生産された原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」を指します。

1947年にアメリカで始まり、1960年代にはヨーロッパにも広がりました。

1997年にはFLO(国際フェアトレードラベル機構)が設立され、認証制度も整備されました。

当初は「途上国支援」という目的で語られることが多かったフェアトレードですが、現在は人権デューデリジェンスやサプライチェーンの透明化への要請と結びつき、企業の経営課題として認識されています。

主な対象産品と生産地

フェアトレードの対象となる産品はさまざまです。

代表的なものはコーヒー・カカオ・コットン・紅茶で、いずれもアフリカや中南米など、労働環境が厳しい途上国で生産されています。

カカオ豆の場合、コートジボワールとガーナの2か国で世界の生産量の約70%を占め、カカオ農園で働く子どもは約156万人(2020年調査)にのぼるとされています。

こうした産品を扱うメーカーや流通業者にとって、フェアトレードは決して「遠い話」ではありません。

関連記事:エシカル消費とは何?SDGsとの関係や個人でできること、企業の取り組み事例も

国際フェアトレード認証の仕組みと種類

フェアトレードを自社の調達方針に取り入れる際、まず認証の仕組みや種類についての理解が必要です。

それぞれご紹介します。

  • FLOCERTによる国際フェアトレード認証
  • WFTOの10原則による団体認証

FLOCERTによる国際フェアトレード認証

世界でもっとも普及しているのは、Fairtrade International(国際フェアトレードラベル機構)が発行し、独立審査機関FLOCERT(フロサート)が認証審査を担う「国際フェアトレード認証」です。

コーヒー・カカオ・コットンなどの農産品を中心に、生産者から小売業者に至るまで、サプライチェーンのすべての段階で必要とされています。

審査では、社会的・経済的・環境的な基準に適合しているかが評価され、3年サイクルで定期監査が行われます。

WFTOの10原則による団体認証

もう一方の主要な認証は、WFTO(世界フェアトレード機関)による団体認証です。

FLOCERTが産品単位の認証であるのに対し、WFTOでは組織全体がフェアトレードの理念に沿って事業を運営しているかどうかを審査します。

具体的には、生産者への就業機会の提供・公正な取引の実践・児童労働や強制労働の排除・環境への配慮など、全10項目の原則が基準です。

また、WFTOは工芸品・衣類・アクセサリーなど農産品以外の商品にも対応しており、幅広い企業・団体で活用されています。

企業がフェアトレードに取り組む4つの経営メリット

ここまでフェアトレードや、その認証の仕組みと種類について説明してきました。

では経営にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

主なメリットは以下の4つです。

  1. ESG評価・投資家対話での優位性
  2. 人権デューデリジェンス対応(EU指令・日本ガイドライン)への備え
  3. ブランド価値・取引先評価の向上
  4. サプライチェーンにおける調達リスク低減

それぞれ解説します。

①ESG評価・投資家対話での優位性

ESG投資の拡大に伴い、サプライチェーンにおける人権や労働環境について、投資家からの監視が一段と厳しくなっています。

フェアトレード認証の取得は、「S(Social:社会)」分野への取り組みを示す明確な証拠となるため、ESGスコアの向上や投資家への説明もよりスムーズに進めやすくなると期待されています。

関連記事:ESG投資を簡単にわかりやすく解説。はじめるメリット・デメリットとは?

②人権デューデリジェンス対応(EU指令・日本ガイドライン)への備え

2024年7月に発効したEU「CS3D」は、欧州の企業だけでなく日本の大手企業も対象です。

取引先を含むサプライチェーン全体で人権や環境への影響に目を向け、問題があれば適切に対処することが求められています。

日本政府も同様のガイドラインを定めており、フェアトレード認証はこうした取り組みに対する企業の姿勢を対外的に示す証拠として活用できます。

③ブランド価値・取引先評価の向上

消費者と取引先の双方で、サステナブルな調達への関心が高まっています。

フェアトレード認証製品の国内市場規模は、2024年に215億円(前年比2.2%増・この10年で2倍超)に達しており、フェアトレードへの対応がブランド価値や取引先からの評価を高める重要な要素となっています。

④サプライチェーンにおける調達リスク低減

気候変動や地政学的なリスクの影響で、途上国からの農産物の調達はますます不安定さを増しています。

フェアトレード認証を通じて生産者と長期的かつ公正な関係を築くことは、原料の安定した調達を実現し、リスクを下げる有効な管理方法となります。

日本企業の取り組み事例——何をしているか、何が評価されているか

日本でもフェアトレードへの取り組みが広がっています。具体的な事例を参考にしながら、自社に活かせるヒントを探してみましょう。

ネスレ日本「ネスレ カカオプラン」

ネスレ日本は、カカオ調達においてフェアトレードを含むサステナブル調達を積極的に推進しています。

「ネスレ カカオプラン」として農家への技術支援と生活支援を組み合わせた取り組みも展開し、サプライチェーン全体の透明化と生産者の生活向上を両立させたモデルとして高く評価されています。

参加企業数が前年比104%増を記録

フェアトレード・ジャパンが展開する「フェアトレード・ミリオンアクションキャンペーン」では、2025年の参加企業数が前年と比べて104%増加。

食品・アパレル・小売業を中心に、フェアトレードへの取り組みを経営戦略として重視する企業が着実に増えています。

一方で、「まだ検討中」の企業と「すでに動き始めている」企業との差は年々広がっています。

早期対応が競争優位につながる局面に入っています。

関連記事:サステナブル調達とは?必要性と導入手順を事例付きでやさしく解説!

フェアトレードと人権デューデリジェンスの接続点

フェアトレードは「社会貢献」だけでなく、人権デューデリジェンスへの対応策としても注目されています。

人権デューデリジェンスとは、「企業が、自社・グループ会社及びサプライヤー等における人権侵害等を特定し、防止・軽減し、取組の実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為」を指します。

ここでは、フェアトレードと人権デューデリジェンスがどのように関わっているのか見ていきましょう。

EU「CS3D」が日本企業に与える間接影響

2024年7月に発効したEU「CS3D」は、EU域外にある日本企業にも無関係ではありません。

EU企業とサプライチェーン上の取引がある場合、日本企業にも間接的に人権・環境への対応を求められる可能性があるためです。

適用開始は2028年7月に延期されたものの、サプライチェーン全体の状況確認には多くの時間がかかるため、できるだけ早く準備を始めておくと安心です。

フェアトレード認証が人権デューデリジェンスの「証跡」になる

フェアトレード認証を取得するためのプロセスには、生産者の労働環境・賃金水準・児童労働の有無などの審査が含まれています。

そのため、認証を取得して継続的に維持していること自体が、サプライチェーンの中で人権デューデリジェンスに取り組んでいる証拠といえます。

ESG報告書の作成や投資家・取引先への説明においても活用できるため、大きな強みとなるでしょう。

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企業がフェアトレードを導入する3つのステップ

最後に、フェアトレードを社内で導入するための具体的な進め方を、3つのステップに分けてご紹介します。

STEP1:現状調達の棚卸し・リスクマッピング

まずは、自社が調達している原材料や製品の中に、コーヒー・カカオ・コットンなどフェアトレードの対象がどれくらい含まれているかを洗い出してみましょう。

調達先の国や地域ごとに人権・労働に関するリスクを整理すると、優先して取り組むべき品目が見えてきます。

STEP2:認証原料への切り替え・フェアトレード・ジャパンへの相談

リスクの高い品目から順に、フェアトレード認証原料への切り替えを検討していきます。

調達コストの変化や認証取得の手順に不安がある場合は、フェアトレード・ジャパンに相談するのがおすすめです。

認証サプライヤーの探し方や、FLOCERT審査の流れについてもサポートを受けられます。

STEP3:ESGレポート・社内外への発信

取り組みの内容は、ESGレポートやサステナビリティレポートに記載して社内外へ発信しましょう。

「認証取得済みの原料比率」「対象産品の調達先情報」など、具体的な数値を開示することで、投資家・取引先・消費者からの信頼を得ることにつながります。

フェアトレードは「コスト」ではなく「経営戦略」

フェアトレードは、「社会貢献のための取り組み」という枠を超えて、今や企業経営に直結するテーマになりつつあります。

EUのCS3Dによる人権デューデリジェンスの義務化やESG投資家からの関心の高まり、そして消費者意識の変化という3つの流れが重なる現在、「何も取り組まないこと」自体がリスクになる時代だといえるでしょう。

フェアトレード認証の取得には、調達方針の透明化や人権デューデリジェンスの証跡となる点、ESG報告の強化など、3つの効果を同時に得られる将来への投資という側面があります。

まずはSTEP1として、自社の調達状況を整理することから、できることを少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

参考一覧

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GREEN NOTE編集部

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