アクアポニックスとは?仕組み、メリット・デメリット、家庭での始め方を徹底解説

「アクアポニックス」を知っていますか?アクアポニックスとは、魚と植物(野菜や花)を同時に育てる生産方法です。
魚のフンが肥料となって植物の成長に使われ、植物が水をきれいにして再び水槽に戻す仕組みです。
新しい循環型農業の技法として注目されています。
本記事では、アクアポニックスの基礎知識からメリット・デメリット、家庭での始め方などを徹底解説します。
アクアポニックスとは?

アクアポニックスは、1つのシステムの中で魚と植物を同時に育てる生産方法です。
アクアポニックス(Aquaponics)という言葉は、水産養殖を表す「Aquaculture」と、水耕栽培を意味する「Hydroponics」を組み合わせて作られました。
1980年代にアメリカで生まれ、1990年代になると商業化が始まりました。
2025年に開催された「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、大阪ヘルスケアパビリオン前にアクアポニックス「いのちの湧水(いのちのいずみ)」が展示されました。
参考:アクアポニックス「いのちの湧水(いのちのいずみ)」|三進金属工業株式会社
アクアポニックスの仕組み
アクアポニックスの装置は、魚を育てる「養殖部分」と野菜や花を育てる「水耕栽培部分」に分かれています。
まず、養殖部分では水槽で魚を育てます。
水槽の水はフィルターによって濾過され、魚が排出したフンは微生物によって植物の栄養へと分解されます。
栄養豊富な水は水耕栽培部分に送られ、植物が栄養分を吸収します。
その後、水は生物の濾過システムを通って、再び水槽に送られます。
この仕組みにより、養殖では水を頻繁に交換する作業がなくなり、水耕栽培では農薬や肥料を使用しません。
さらに、水耕栽培のため雑草が生えず、除草剤も不要です。
アクアポニックスは、自然の流れに近い循環型農業といえるでしょう。
アクアポニックスに対応している魚・植物
アクアポニックスでは、さまざまな種類の魚や植物を育てられます。
特に野菜は育てやすい種類が多いのが特徴です。
どのような植物や魚が育てられるのか、次の表にまとめました。
| 魚 | 植物 |
|---|---|
| ・チョウザメ ・ティラピア ・エビ ・錦鯉 ・イワナ ・サクラマス ・マス ・サケ など |
【野菜】 ・葉物類(レタス、白菜、水菜、ルッコラなど) ・果菜類(トマトなど) ・根菜類(大根、にんじん、生姜など) ・豆類(スナップエンドウ) ・フルーツ(イチゴ、ブルーベリーなど) ・ハーブ(バジル、クレソン、ミントなど) 【花】 ・バラ ・チューリップ ・菊 など |
魚は、淡水魚であれば多くの種類を飼育できるといわれています。
エビも淡水で生息できる種類なら可能です。
現在、商業化されているのは淡水魚を用いたアクアポニックスです。
一方で、海水魚に対応したアクアポニックスは、商業化に向けた研究が進められています。
大阪・関西万博の「いのちの湧水」では、耐塩性植物と組み合わせることで、海水魚の養殖水槽が公開されました。
技術の進歩により、今後さらに多くの魚や植物がアクアポニックスの対象になると考えられます。
参考:「海水アクアポニックス」の商業化に向け、日本エア・リキードと共同研究を開始|PR TIMES
参考:アクアポニックス「いのちの湧水(いのちのいずみ)」|三進金属工業株式会社
アクアポニックスが注目される理由

アクアポニックスは、1990年代から普及し始めた技法です。
2000年以降、持続可能性やSDGsなどの影響により環境問題への関心が高まったことから、アクアポニックスが注目されるようになりました。
アクアポニックスの最大の特徴は、農業における環境への負荷が低いことです。
これまでの農業では、安定した品質や生産量を維持するために農薬や化学肥料が多く使われてきました。
しかし、それらを過剰に使うことで、土壌汚染や生態系の破壊などを引き起こすとして問題となっています。
一方、アクアポニックスでは養殖魚のフンが植物の栄養となります。
そのため、化学肥料や農薬を使わなくても植物の栽培が可能です。
アクアポニックスのメリット

環境負荷の低いアクアポニックスですが、ほかにも、以下のようなメリットがあります。
- 水の使用量が少ない
- 農薬・化学肥料を使わず安心して栽培できる
- 野菜の成長が早い
水の使用量が少ない
アクアポニックスでは、水を循環して利用するため、水の使用量を大幅に削減できます。
従来の土壌栽培と比較すると、90%以上も水使用量削減が可能といわれています。
これにより、水資源が不足している地域でも野菜などの栽培が可能です。
一方、淡水魚の養殖では、エサの食べ残しやフンにより栄養が増えすぎると、水質汚染やアオコの発生を引き起こす可能性があります。
しかし、アクアポニックスでは植物の力で水が浄化されるため、そのような心配もありません。
野菜の成長が早い
アクアポニックスで植物を栽培する場合、土壌栽培よりも短い時間で収穫できるようになります。
株式会社プラントフォームによると、通常60〜90日かかるレタスの栽培が、アクアポニックスでは最短25日で収穫可能なサイズまで成長することが確認されています。また、
屋内での栽培となるため天候の影響を受けにくく、常に安定した量の野菜を生産できる点も大きなメリットです。
規模や設置場所に制限が少ない
アクアポニックスは、規模や設置場所に制限が少ないのもメリットの一つです。
例えば、商業向けなら温室や倉庫などの屋内施設でも設置できます。
レストランやカフェに設置すれば、お客さんが見る楽しみもあり、サステナブルな取り組みとしてアピールできます。
また、小中規模のアクアポニックスであれば、学校への導入も可能です。
その場合は、生態系や循環の仕組みの学びにつながるでしょう。
家庭用であれば倉庫や庭などに設置することで、家庭菜園として楽しめます。
リビングに置いて、観賞用として活用もできます。
アクアポニックスのデメリット

メリットの多いアクアポニックスですが、いくつかのデメリットもあります。
- 初期費用が高い
- 漁業と農業の知識が必要
- 防虫対策が必要
初期費用が高い
デメリットの一つは、初期費用の高さです。
アクアポニックスを始めるには、養殖用の水槽やポンプ、フィルター、栽培用のベッドなどが必要です。
規模や設置場所により異なりますが、商業用なら一般的に数百万程度かかります。
大規模なアクアポニックスでは、1億円以上かかることもあります。
また、アクアポニックスは屋内に設置することが多いため、設置場所によっては温度調整設備や照明設備なども必要です。
漁業と農業の知識が必要
アクアポニックスで安定した収穫量を得るためには、漁業と農業の両方の知識が必要です。
漁業と農業のバランスが重要で、水質や水温、養分などを適切に管理しなければなりません。
大規模であればあるほど、管理がより難しくなります。
また、植物につく害虫が魚に悪影響を与える可能性があるため、病害虫に対して適切な対策が必要です。
植物の変更が難しい
アクアポニックスでは、特定の植物に合わせて魚や微生物、温度、水質などを設計します。
そのため、システム稼働後に異なる栽培条件の植物への変更が難しくなります。
また、魚が好む水温と植物が生育しやすい温度が異なると、温度バランスが崩れて成長が阻害されるかもしれません。
さらに、植物に送られる栄養は魚のエサによって変わるため、エサを変えたり植物を変えたりする場合は再度調整が必要です。
増設する場合には、システム全体の再設計が必要になる場合もあります。
大規模なアクアポニックスを導入する際は、栽培する魚や植物の種類を慎重に選定しましょう。
海外・日本のアクアポニックスに関する動向と将来性

水の使用量を節約でき、植物の成長も早いアクアポニックスは、新しい農業の方法として国内外で注目されています。
海外と日本の動向を見ていきましょう。
海外のアクアポニックスに関する動向
海外では、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパを中心に、大規模な商業農場が作られ、運営されています。
また、都市型農場やレストラン直結型など、さまざまなタイプのアクアポニックスも存在します。
砂漠地域での農業や貧困地域での食料自給としての活用例もあり、地域課題の解決策として注目されているのが特徴です。
日本のアクアポニックスに関する動向
日本でのアクアポニックス導入については、現在も研究や実証実験の段階です。
設備も小規模なものが多く、主に教育や地域活性化を目的とした取り組みが目立ちます。
また、日本では淡水魚よりも海水魚のほうが人気なため、淡水魚の単価は低くなる傾向です。
さらに、アクアポニックスの認知がまだ低いため、ブランディングに力を入れないと、一般的な葉物野菜に比べて価格が高く感じられてしまいます。
そのため、アクアポニックスで収穫した野菜などを販売する際には、消費者に取り組みの背景や特徴などを積極的に伝えていくことが重要です。
家庭でアクアポニックスを始める方法

「アクアポニックスを、まずは家庭用として始めてみたい」と思われた方もいるのではないでしょうか。
キットを購入したり、自作したりすれば、小さなアクアポニックスを家庭で手軽に楽しめます。
アクアポニックスのキットを購入する
アクアポニックスを家庭で始めたい人向けのキットが販売されています。
これらのキットには、水槽・栽培用ベッド・水中ポンプがセットになっているものが多くあります。
株式会社アクポニからも、さまざまなタイプの家庭用キットが販売されており、価格は2万円台から購入可能です。
魚の飼育や家庭菜園が楽しめるだけでなく、部屋のインテリアとしても活用できます。
アクアポニックスを自作する
アクアポニックスの設備は自作も可能です。
自作する場合は、以下の材料が必要になります。
作りたい規模や育てたい植物、魚の種類によっては、追加で必要になるものもあります。
- 水槽
- 水中ポンプ・ホース
- 配管
- ハイドロボール(野菜ベッド)
- 飼育したい魚
- 野菜の苗 など
作り方は、企業のサイトやYouTubeなどで紹介されています。
自作することで材料の素材や見た目、大きさなどを自由に選べます。
自分だけのアクアポニックスを作ってみてはいかがでしょうか。
参考:自作アクアポニックスキットの作り方【DIYマニュアル】|おさかな畑
参考:アクアポニックスをやってみよう|本田技研工業株式会社
まとめ
アクアポニックスは、持続可能な農業システムの一つです。
環境への負荷が少なく、循環型農業を見える化できるため、今後ますます注目されていくと考えられます。
メリットが多いアクアポニックスですが、コストの高さや漁業と農業の両方の知識が必要なことなど、いくつかの課題もあります。
日本では、アクアポニックスについての研究や実証実験の段階であり、商業化にはまだ時間がかかるでしょう。
日本でアクアポニックスが普及していくためには、まず多くの人に認知されることが重要です。
そのための一歩として、自身で小さなアクアポニックスに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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