日本のSDGs達成度は19位|達成への課題と企業事例
世界的に取り組まれているSDGs(エス・ディー・ジーズ)は、「持続可能な開発目標」という意味で、国や地域、企業がさまざまな取り組みを実施しています。
日本国内でも多くの企業や団体がSDGs達成に取り組んでいますが、実現においては複数の課題が残っていることも事実です。
ここでは日本におけるSDGsの課題と、達成度や解決策について紹介していきます。
【日本】SDGsの達成度と課題について
SDGsの策定において、17の目標が設定されました。
「誰一人取り残さない」という原則から、世界においてより脆弱な立場の人々に目を向けた対策が求められています。
我が国日本でも、SDGs達成を掲げてさまざまな取り組みを行っています。
国際的な取り組みとなると、各国に比べて日本の達成度はどの程度なのか気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで、日本におけるSDGsの現状と、今後の課題について見ていきましょう。
2022年のランキングでは19位
SDGsは、目標の達成期限を2030年に設定しています。
期限まで残り10年を切った2022年時点のSDGs達成度ランキングによると、日本は163カ国中の19位となり、2021年の18位よりも順位が低下しています。。
参照:「JETRO「ビジネス短信」」
参照:「Sustainable Development Report 2021」(Bertelsmann Stiftung)
国際的に見ると、日本はアジアでトップの達成度を誇っています。
積極的にSDGsへ取り組み、多くの目標を達成していたことが分かります。
また、SDGs達成度ランキングの特徴として、上位10カ国がすべて欧州の国であることがあげられます。
日本より上位はすべて、世界銀行グループから先進国として扱われている欧州の国です。
日本の主な課題とは
日本は2022年時点で、以下にあげる3つの目標を達成しています。
一方、2022年のスコアで赤(主要な課題が残っている)評価となるのは、以下の6つの目標です。
- SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」
- SDGs12「つくる責任、つかう責任」
- SDGs13「気候変動に具体的な対策を」
- SDGs14「海の豊かさを守ろう」
- SDGs15「陸の豊かさも守ろう」
- SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」
今後はすでに達成している目標を継続しつつ、課題の残る目標を達成する取り組みが求められます。
日本における目標達成のための取り組み
日本が現在のランキングに配置されるまで、どのような取り組みが行われてきたのでしょうか。
第一にあげられるのが、SDGsへの取り組みを促進するために日本政府が2016年に新設した、SDGs推進本部の存在です。
本部が中心となってSDGs実施指針を策定し、日本が取り組む8つの優先課題を定めています。
それをもとに、2022年に決定されたSDGsアクションプランの重点事項は以下です。
- 感染症対策と未来の基盤づくり
- 成長と分配の好循環
- 地球の未来への貢献
- 普遍的価値の遵守
- 絆の力を呼び起こす
出典:「SDGsアクションプラン 2022」(SDGs推進本部)
しかし、未だに達成されていない目標も多いことを考えると、現在の取り組みは本当の課題解決になっているのでしょうか。
そもそもなぜ、日本のSDGs達成状況にいくつもの課題が残っているのか、もう少し深堀りして考えてみましょう。
SDGs達成への課題が発生する4つの要因
先進国に分類される日本は、国際的に見てもSDGsの目標達成度は決して低くありません。
一方で、ジェンダー問題や環境問題への取り組みなど、さまざまな課題が残っています。
日本のSDGs達成状況に対して、課題が発生している要因として、次の4つがあげられます。
一般的な認知度が低い
そもそも日本国内において、SDGsの一般的な認知度が低いことがひとつの要因です。
SDGsの関連施策を進める企業や自治体は増えていますが、一般的な認知度はまだまだ高いとはいえないでしょう。
世界には多くの問題があることは認識しているものの、SDGsという言葉を聞いたことがない人も少なくありません。
あなたも実際、日常生活の中でSDGsに関する話題を何度も耳にする、ということは少ないのではないでしょうか。
一人だけでは解決できない
世界中のあらゆる問題を受け、課題解決のために掲げられたSDGsは、インフラ整備など大掛かりな目標も多く含んでいます。
SDGsで具体的に設定されている17の目標はどれも、個人や小さな企業の努力だけでは達成が難しいものばかりです。
SDGsの実現を目指すには、周りの環境や人々を巻き込んで協力し合い、積極的な行動で実現させる必要があります。
ターゲットの定義の解釈が人により異なる
SDGsはターゲットの定義が漠然としている部分も多く、人によって解釈にズレが生じることがあります。
地域や文化、国が異なれば、それぞれの目標で掲げられるものに対する基準も異なるためです。
たとえば、SDGsで掲げる目標のひとつに、「安全な水とトイレを世界中に」がありますが、地域や文化が異なれば、安全な水の定義は大きく異なるものです。
日本人にとっての安全な水のイメージが、必ずしも発展途上国や欧米の先進国と同等とは限りません。
水の安全性のほかにも、「質の高い教育」など、さまざまな部分で解釈のズレは生じます。
事業内容とSDGsの達成がかみ合わない
最近は投資家が企業を評価するポイントのひとつとして、SDGsの目標達成や取り組み状況もあげられるようになりました。
社会的なイメージの向上にもつながるため、多くの企業がSDGsの達成を視野に入れています。
一方で、事業内容によってはSDGs達成への取り組みが難しいケースも少なくありません。
そんな企業が事業内容やビジネスプランを考慮せず、無理にSDGsを取り入れれば、うわべだけのものになってしまいます。
SDGsの課題を解決する3つの考え方
SDGsの達成には多くの課題があります。
これらを解決するためには、どのような考え方をもち、どのような行動をすることが必要なのでしょうか。
ここでは、SDGsにおける課題を解決するための重要な考え方や、企業や団体の一員として自分たちができることについて紹介します。
1.SDGsについての認知や理解を広める
先に説明したとおり、SDGsの認知度は高いといえない状況です。
まずはSDGsについての認知度を向上させたり、理解を広めたりする必要があります。
SDGsの意味や背景について一人ひとりが理解を深めることで、問題意識をもって積極的に課題解決へ取り組めるでしょう。
具体的な解決策として、政府のガイドラインを読んだり、企業で社内研修を実施したりすると効果的です。
【企業事例】パーソルテンプスタッフ株式会社
パーソルテンプスタッフ株式会社では、トップマネジメント23名を対象に、SDGsの本質に関する研修会を開催しています。
さらに、社内のあらゆる層の理解度を深めるため、「SDGsを知る」ことを目的としたオンライン研修を、全社公募700人規模で行っています。
2.SDGsについて話し合う場を設ける
SDGsの達成に対して課題が発生する要因のひとつ、目標に関する定義や認識のズレは、日本人同士でも起こり得ます。
同じ方向を見て一緒にSDGsを達成するためには、お互いの認識をすり合わせることも大切です。
SDGsについて話し合えば、SDGsの認知度を高めるとともに、お互いの定義や認識のズレをなくすことができます。
たとえばSDGsの中で特に気になる目標や、ゴール達成のために何ができるのかなど、テーマを決めて話し合ってみましょう。
【企業事例】株式会社ZENKIGEN
株式会社ZENKIGENの例では、「SDGsにどう取り組んでいくか」を議題として、全社的な議論の場を設けています。
自分たちの会社やサービスがSDGs達成にどのように貢献できているかなど、より再現性の高い話を行います。
自社の達成状況の確認にもつながるでしょう。
3.長期的な益を重視する
SDGsでいう「持続性」に注目してみましょう。
目先の利益ではなく、長期的な視点をもって、未来に投資する気持ちで取り組むことが大切です。
漠然とした将来のイメージでも良いのですが、10年後の未来や、子どもたちが暮らす社会について考えると実感しやすいでしょう。
【企業事例】北興化学工業株式会社
北興化学工業株式会社の事例として、新経営計画の策定に、SDGsを盛り込んでいることがあげられます。
自社の事業を5つの「SDGsへの取り組み方針」に照らし合わせて振り分け、取り組みのテーマと目標の設定を行っています。
長期的なビジョンとなるため、定期的な進捗管理を設定し、単年で経過を確認していく仕組みも設けています。
まとめ
SDGsが掲げる17の目標を達成するためには、私たち一人ひとりが、進捗状況の把握と危機感の共有が必要です。
現在SDGsの達成に取り組んでいる企業においても、定期的な効果分析と評価指標継続的な最適化が重要です。
当事者意識をもって取り組むことが大切です。
当事者意識を育むために、SDGsへの理解度を深める場や機会を設けて、企業や自治体全体で認識をすり合わせる必要もあります。
すでに日本が達成した3つの目標の状況を維持しつつ、日本全体で残された課題に取り組んでいきましょう。
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