バーゼル条約とは?SDGsとの関係、企業が今すぐ取るべきアクション

「バーゼル条約は輸出入の手続きを定めたものではないか?」
そう感じているサステナビリティ担当者は、まだ多いかもしれません。
しかし2025年1月からは電子機器廃棄物(e-waste)に関する規制が大幅に強化され、製造業・IT・流通業をはじめ、あらゆる企業に影響が及ぶ時代となりました。
本記事では、バーゼル条約の基礎知識から最新のe-waste改正・SDGsとの関係・企業が具体的に取るべき対応策まで、実務担当者の視点からわかりやすく解説します。
バーゼル条約とは?——制定の背景と基本的な仕組み

バーゼル条約は、有害廃棄物の国際的な移動を規制するために制定された国際条約です。
概要に加えて、なぜこの条約が生まれたのか、その背景を知ることで、SDGsとの関係もより理解しやすくなります。
有害廃棄物の不適正輸出が世界問題になった背景
1980年代、環境規制が整備された先進国から規制が緩い途上国に、有害廃棄物が大量に輸出されるという深刻な事態が相次ぎました。
これらの廃棄物を受け入れた国では、適切な処理施設が整っていなかったため、不法投棄や野焼きによる土壌・水源の汚染、住民への健康被害が各地で発覚しました。
この問題を受けて、UNEP(国連環境計画)の主導で1989年に採択され、1992年に発効したのがバーゼル条約です。
規制対象物と越境移動の仕組み・バーゼル法
バーゼル条約では、有害廃棄物・廃プラスチック・e-waste(電気・電子機器廃棄物)など、さまざまな廃棄物が規制対象となっています。
越境移動するには輸入国の書面による事前の同意と、条約で定められた移動書類の添付が義務付けられています。
日本では「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」によって法整備が行われており、廃棄物を輸出入する際には経済産業大臣の承認や環境大臣による確認などが必要です。
最新の改正動向——2025年施行のe-waste規制と企業への影響

2025年1月に施行された最新のe-waste規制の内容と、実務への影響をご紹介します。
改正の内容と発効のタイムライン
2022年6月のCOP15(第15回締約国会議)で決議されたe-waste改正が、2025年1月1日から施行されました。
これにより、従来は規制対象外だった非有害なe-wasteも含め、すべてのe-wasteがバーゼル条約の規制対象となっています。
また、廃電子基板・液晶モニター・スマートフォンなど、これまで「非有害」として自由に輸出入できていた品目についても、2025年1月以降は事前同意手続きが必要となりました。
そのため、企業にとって既存の輸出入ルートを早急に見直す必要があります。
製造業・商社・リサイクル業が対応すべき実務ポイント
特に注意しなければならないのが「該非判断」です。該非判断とは、輸出予定の貨物や提供予定の技術が規制対象かどうかを判定する作業です。
自社が取り扱う廃棄物が、改正バーゼル法の規制対象に該当するかどうかは、経済産業省や環境省が公開している「電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準」と照らし合わせて確認する必要があります。
廃棄物処理を委託している場合は、委託先が持つ許可内容の確認も必須です。
バーゼル条約とSDGsの関係——4つのゴールで読み解く差別化の核心

バーゼル条約は、SDGsのいくつかの目標を達成するための実現手段として、国際的に重要な役割を担っています。
主な目標は以下のとおりです。
- 目標3「健康と福祉」
- 目標12「つくる責任・つかう責任」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標17「パートナーシップ」
目標3「健康と福祉」:有害廃棄物による健康被害を防ぐ
SDGs目標3.9では、「2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる」と明示されています。
バーゼル条約によって有害廃棄物の不法な越境移動を防止することは、途上国の住民を廃棄物汚染による健康被害から守るという、目標3の達成につながる取り組みです。
目標12「つくる責任・つかう責任」:廃棄物の適正処理と3R
バーゼル条約は、SDGs目標12.4が掲げる「2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じて、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現する」という方向性と関係します。
これは「人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」という取り組みを支えるものでもあります。
廃棄物を適正に処理・リサイクルすることは、Reduce・Reuse・Recycle(3R)の推進に直結します。
関連記事:SDGs12「つくる責任 つかう責任」|目標や課題、日本企業の取り組みを紹介
関連記事:サーキュラーエコノミーとは?取り組みによるメリット・デメリットを解説
目標14「海の豊かさを守ろう」:廃プラ規制と海洋汚染防止
バーゼル条約は、廃プラスチックの越境移動も規制対象としており、海洋汚染へつながる経路を断つ役割を担っています。
SDGs目標14が掲げる「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」という目的を実現するためにも、廃棄物の適正管理は必須です。
関連記事:SDGs14「海の豊かさを守ろう」|企業や個人の海を守るための取り組み
目標17「パートナーシップ」:189か国が参加する国際協調の枠組み
バーゼル条約の締約国は189か国・1機関にまで広がっています
これは単なる規制の枠組みを超え、SDGs目標17が掲げる「グローバル・パートナーシップの活性化」そのものといえます。
企業が条約を遵守して廃棄物の管理に取り組むことは、グローバル・パートナーシップに積極的に参加する姿勢を示すことにもつながります。
企業にとってのリスクと機会——「法令遵守」で終わらせない視点

バーゼル条約への対応はリスク管理であると同時に、ESGレポートで積極的に開示できる「機会」にもなります。
ここでは、リスクと機会の両面についてご紹介します。
関連記事:サステナビリティ情報とは?開示する項目や基準、動向を解説
見逃せない3つのリスク
バーゼル法を遵守する上で、見逃せないリスクは以下の3つです。
| リスク | 解説 |
|---|---|
| 違反による法的制裁と行政処分 | e-waste改正によって規制対象が拡大したため、今まで問題のなかった輸出入ルートが新たに違反となるリスク |
| ESG評価の低下 | 廃棄物管理に不備があった場合、ESGを重視する投資家から「投資先として不適切」と判断され、投資対象から外されるリスク |
| レピュテーションリスク(評判リスク) | サプライチェーン上で不適切な廃棄物処理が発覚した場合、企業の評判が損なわれるリスク |
これら3つのリスクは、対応が遅くなるほど影響が拡大します。
「気づいたときにはすでに手遅れ」にならないよう、早期の対策が重要です。
SDGs貢献として開示できる「機会」の視点
一方で、適切な廃棄物管理の実践は、SDGs目標12・14への貢献としてESGレポートに積極的に記載できます。
廃棄物管理を単なる「義務」としてではなく、「SDGs経営の実践」として積極的に開示することで、投資家や取引先との信頼関係がより深まります。
先進企業の対応事例——SDGs開示に活用するモデル

廃棄物の越境管理が必要な業種では、バーゼル条約への対応をESGレポートに反映させる事例が増えています。
ここではその一例を紹介します。
| 業界 | 事例 |
|---|---|
| 電機・電子機器 | 使用済み製品の回収やリサイクルプログラムをSDGs目標12への取り組みとして位置づけ、ESGレポートで積極的に発信 |
| 自動車 | 廃バッテリーや廃部品の越境移動を適切に管理し、サプライチェーン全体の透明性向上の取り組みとして報告 |
| 商社 | 廃棄物の流れ全体を把握して適正処理を徹底し、その実績をESGレポートの環境セクションで数値として提示 |
これらの事例に共通しているのは、廃棄物管理を単なる義務で終わらせるのではなく、ESGレポートで積極的に情報開示を行っている点です。
「実施していること」を「広く伝えること」まで一貫していることが、企業価値の向上につながっています。
企業が今すぐ取れる3つのアクション

「何から手をつければいいかわからない」と感じている担当者のために、すぐに実践できる3つのステップをまとめました。
STEP1:自社の廃棄物フロー把握・バーゼル法該非確認
まず、自社が取り扱っている廃棄物や製品の残材の中に、バーゼル法の規制対象となる品目が含まれていないかを確認しましょう。
特にe-wasteは、2025年の改正後に規制対象が広がっているので、改めて確認しておくことが必要です。
廃棄物処理を外部に委託している場合は、委託先の許可証も合わせて確認しておくと安心です。
STEP2:SDGsゴールとの紐づけ・目標設定
把握した廃棄物フローをSDGs目標3・12・14・17と結びつけて考え、数値目標を設定しましょう。
例えば「リサイクル率を〇%向上させる」「適正処理率を100%にする」など、具体的な数値目標を掲げると投資家との対話もスムーズに進めやすくなります。
STEP3:ESGレポート・投資家対話への組み込み
取り組みをESGレポートやサステナビリティレポートに記載し、SDGsへの貢献として明示します。
「バーゼル条約遵守=SDGs目標12・14への取り組みにつながる」という文脈で情報発信することで、投資家・取引先からの評価も高まります。
まとめ——バーゼル条約は「SDGs経営の実践フィールド」
バーゼル条約は、有害廃棄物の国際移動を規制するだけの枠組みではありません。
SDGs目標3・12・14・17と深く結びついており、企業がSDGs経営を具体的に実践するための指針にもなっています。
2025年にe-waste規制が改正され、対応すべき企業の範囲はさらに広がりました。
これまで「当社には関係ない」と考えていた企業も、今こそ社内の廃棄物管理の流れを見直すべきタイミングを迎えています。
また法令遵守だけでなく、廃棄物管理の取り組みをSDGsへの貢献として積極的に開示することで、投資家・取引先・消費者からの信頼を獲得できます。
「やらなければならないこと」を「自社の強み」として発信し、さらなる信頼獲得につなげましょう。
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